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平成23年1月18日 毎日新聞の記者の目より
 
鈴鹿の旧海軍格納庫保存問題

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以下に新聞記事よりスキャンした原文のまま内容文を掲載しますー)

タイトル 戦争遺跡の価値 壊す前に評価を  

鈴鹿の旧海軍格納庫保存問題


 伊勢湾に近い旧第一鈴鹿海軍航空基地三重県鈴鹿市)跡地に現存する3棟の巨大な航空機格納庫の解体が今月下旬に始まる。

 市民団体が、土地を所有するNTT西日本、そして鈴鹿市に保存と平和利用を訴えているが、文化財としての価値を評価もされないまま姿を消そうとしている。
 戦争遺跡に対する理解には地域差があるが、「全国的にも貴重」との専門家の指摘もある格納庫が全国の多くの人に知られぬまま消滅するのは納得できない。


軍都の”象徴”3月までに解体

 同基地は1938年、鈴鹿海軍航空隊として開設され、搭乗員の教育・訓練機関として計約3万人の航空兵を各実戦航空隊に送り出した。終戦直前に航空基地に転換され改称、本土決戦に備えた。

 165万平方mの敷地内に五つの格納庫ができたのは40年前後。現存するのは幅75m、奥行き45m、高さ11mの2棟と幅38m、奥行き44m、高さ11mの1棟で、鉄骨を周囲に巡らせ、最大計50機の戦闘機を格納できる。



 戦争遺跡保存全国ネットワーク(事務局・長野市)によると、旧海軍格納庫は陸上自衛隊霞ケ浦駐屯地(茨城県)などにある。多くは自衛隊用施設に改修されて自由に見学できず、
それ以外で現存するのは京都府京丹後市(―棟)などわすか。鈴鹿は原形をほぼ完全に残している点でも貴重という。

 格納庫を含む34万平方mは戦後、旧電信電話公社(現NTT西日本)に払い下げられて研修施設となり、格納庫は倉庫や社員研修に使われた。

 01年の施設閉鎖後、鈴鹿市がNTTや県などと跡地利用を検討。北東部は市か買収して防災公園を整備し、格納庫のある南・南西部は市街地整備区域とし、NTTが11年3月までに格納庫を取り壊すことになった。


 同市は42年12月、2町12村の合併でできた「軍都」だ。海軍航空隊や海軍工廠設置に伴い、軍部か強力に合併を進めたとされる。今も試射場跡、弾薬庫など多くの戦争遺跡が残るが、文化財登録されているのは東名阪自動車道・鈴鹿インター近くに残る航空機を敵の攻撃から守る掩体壕(国文化財)だけだ。市内で最も規模の大きい遺跡である格納庫は、いねば軍部の″象徴″といえる。その「建造物としての価値」と暦史的な価値」を伝えていこうと、「鈴鹿市の戦争遺跡を保存・平和利用する市民の会」(約130人)も09年に発足した。



 納得できないのは、NTTと市がこの二つの「価値」について、きちんと評価しないまま解体を決めたことだ。市民の会は、伝統を生かした工法を提唱する構造設計家、増田一真さん(77)による調査をNTTに求めたが断られたという。増田さんは「格納庫を壊して広大な空間を新しく造る費用に比べれぱ、補強などをして生かす費用はわずかだ」と言う。


 NTTは「計画を進めるために格納庫は撤去せざるを得ない。文化財的価値についてはNTTでは判断できない」と説明する。一方の市文化課の担当者は「所有者の申請がなければ、文化財的価値を判断しようがない」と話す。両者が責任を押しつけ会っているように思える。



 戦争遺跡の文化財指定は90年、沖縄県南風原町が陸軍病院壕群を町文化財に指定したのが最初だ。国は95年、文化財指定の対象の目安を第二世界大戦終結時まで拡大した。戦争・跡保存ネットのまとめでは、戦争遺跡関連では現在、全国で170件余りが国や県、市町村に文化財指定・登録されている。だが戦争遺跡を文化財ととらえる歴史が浅いため、地域ごとの意識の差が大きいのが現状で菱駿武・同ネット代表(65)は『西南戦争以後の戦争で残された十数万を超える戦争遺跡のほとんどは対象外で、消滅の危機にある」と指摘する。


平和利用の先進例全国に

 NTTは、敷地内にある当時の番兵棟や正門などは防災公園に移設する方針。だが市民の会は「規模の大きい格納庫こそ残す意味がある」とし、軍都から「工都」へ発展した市の歴史を紹介する平和ミュージアムや交流広場、避難所などとして整備・活用する構想を練る。
海軍の掩体壕を文化財指定して周辺用地を含めた史跡公園として整備した大分県宇佐市
や、
陸軍の滑走路跡などの案内文付き地図を発行している山梨県南アルプス市
など平和利用の先進例は全国にある。



 10年末、市民の会は全国から集めた1万1400人余りの署名をNTTに提出、格納庫の保存と平和利用を改めて求めた。貴重な戦争遺跡が消える恐れは全国にある。きちんと評価し、説明責任を果たすことが、自治体と企業の最低限の義務だ。

毎日新聞 2011年1月18日 





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